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 ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、「戦争を終わらせる」ことを急ぐ米国のトランプ政権と、ウクライナや同国を支援する欧州との議論がかみ合わない。14日から各国の首脳、閣僚が参加するミュンヘン安全保障会議が始まったが、米国がどのような停戦交渉を描くのかが見えない。ウクライナ、欧州側は置き去りにされる危機に焦りを募らせている。

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ドイツ南部ミュンヘンで2025年2月14日、ウクライナのゼレンスキー大統領との会談に臨むバンス副大統領(中央)や米国代表団=ロイター

 1月20日に発足したトランプ政権の閣僚が国際会議で初めて登壇する機会となった14日のバンス副大統領の演説。始まって間もなく、会場は凍り付いた。バンス氏がいきなり激しい欧州批判を展開したからだ。

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 新政権の外交政策披露が期待された場で、バンス氏が時間の大半を割いたのはフェイクニュースや選挙干渉を防ぐため欧州が行うSNS規制への批判だった。一方的な演説に拍手もまばら。会場ではあぜんとした表情をみせる出席者もいた。

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ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議で2025年2月14日、耳を傾ける参加者ら=ロイター

 バンス氏はその後のウクライナのゼレンスキー大統領との会談の冒頭で「永続的な平和を達成したい」と話した。しかし、その道筋について「交渉のために選択の余地を残したい」と具体的に語ることはしなかった。

 トランプ政権は対外援助全般に消極的だ。中でも、バイデン前政権が巨額を費やしてきたウクライナへの支援を特に厳しい批判の標的にしてきた。米国の金は、遠い地の民主主義を守る戦いに使うより、移民や薬物の流入を止めるための国境強化と、国民の暮らしを守るために使うべきだという考え方は、トランプ氏の「米国第一」主義を信奉する支持者に広く浸透している。選挙戦中に「24時間以内に戦争を終わらせる」と豪語してきた手前、複雑な交渉に長い時間はかけられない。

「偽の平和では何も得られない」

 一方の欧州では、トランプ氏…

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